中高生のNG練習5選と速くなるドリル【箱根駅伝2区区間賞コーチ直伝】
「毎日一生懸命走っているのに、タイムが縮まらない」「ライバルより練習量は多いのに、試合で負けてしまう」——その悩みの原因は、練習量ではなく練習の「中身」にあるかもしれません。
中高生ランナーの多くが、知らずに「速くなれない練習」を続けています。がんばって走り込めば走り込むほど、悪いフォームが体に染み込んで逆効果になるケースは決して少なくありません。
この記事では、箱根駅伝2区区間賞・青山学院大学4年時主将の森田歩希コーチが、中高生ランナーが無意識にやってしまっているNG練習5選と、明日の部活からそのまま使える即効ドリル5種を手順・本数つきで徹底解説します。
この記事を読むとわかること
- 走り込みで速くならない科学的な理由
- 中高生が無意識にやっているNG練習5選とやめるべき理由
- 部活でそのまま実践できる即効ドリル5種(手順・本数つき)
- 保護者・顧問の先生が知っておくべき「成長期の走り込みリスク」
走り込んでも速くならない「本当の理由」
中高生に多い「練習量を増やせば速くなる」という考え方は、実は大きな誤解です。
1500m・3000mのような中距離種目は、最大スピードと持久力の両方が必要な「神経系と有酸素系の複合種目」です。長距離の走り込みで心肺機能は高まりますが、速く走るために必要な「瞬発力・神経伝達の速さ・地面への力の伝え方」は、走り込みではほとんど身につきません。
さらに深刻なのが「フォームの刷り込み」問題です。疲れた状態でフォームが崩れたまま走り続けると、脳と体に「悪いフォーム」が染み込んでしまいます。これが、走り込んでも速くならない最大の理由のひとつです。
「中高生は距離を踏むより、スピードの出る走りを身につけることが大事。中学時代に走り込ませすぎると、高校・大学で伸び悩み、陸上が嫌いになって辞めてしまうケースが多い。中学生に必要な最大距離は3000m。それを速く走るために大量の走り込みは不要なんです。」
— 森田歩希コーチ(箱根駅伝2区区間賞・総合優勝2回・青山学院大学4年時主将 / Sterling Squad 代表コーチ)
| 学年 | 1日の適切な走行距離の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 中学生 | 最長3〜5km程度 | 走り込みより「速い走り」の習得を優先 |
| 高校生(基礎期) | 10km前後 | 20〜30km走は基本的に不要 |
| 高校生(強化期) | 15km程度まで | 強度と距離を両立させないこと |
中高生がやってはいけないNG練習5選
【NG1】フォームが崩れるまで走り込む
部活で「もう1周!」と言われ、ヘトヘトになりながら走り続けた経験はありませんか?その練習、逆効果かもしれません。
疲れると体幹が崩れ、腕が下がり、前傾姿勢が消えます。この「崩れたフォーム」で走り続けると、脳がそれを「正しい走り方」として学習してしまいます。どれだけ距離を踏んでも、身につくのは「崩れたフォームで長く走る技術」だけです。
✅ 改善策:フォームが崩れ始めたら、そこで練習を切り上げる勇気を持つ。「量より質」で正しいフォームを反復することが、最短で速くなる道です。
【NG2】毎日全力で練習する(強弱のない練習)
「毎日一生懸命やれば必ず結果が出る」——この考え方が、実は成長を妨げる最大の落とし穴です。
強くなるためには、「ハードな日」と「軽い日」の強弱が必要です。毎日全力で練習すると体は回復できず、疲労が蓄積し続けます。その結果、慢性的な疲れ・パフォーマンス低下・怪我につながります。
「休まないといけないわけでも、ハードにやらないといけないわけでもない。しっかりと強弱を持って練習することが最も重要です。原監督から学んだ青学メソッドの根幹がここにあります」
— 森田歩希コーチ
✅ 改善策:週に2〜3回「ポイント練習(強度の高い日)」を設け、残りは「ジョギング(軽い日)」にする。軽い日は本当に軽く走ることが大切です。
【NG3】走る前に静的ストレッチをする
「練習前にしっかりストレッチしてから走ろう」——一見正しそうですが、やり方が間違っていると逆効果になります。
走る前に長時間かけて筋肉を伸ばす「静的ストレッチ(スタティックストレッチ)」をしてしまうと、筋肉の張力と反応速度が一時的に低下します。準備できていない体に突然激しい運動をさせることになり、怪我のリスクが上がります。
✅ 改善策:
・走る前:動的ストレッチ(体を動かしながら温める)
・走る後:静的ストレッチ(筋肉をゆっくり伸ばす)
この使い分けが、怪我予防とパフォーマンス向上の両方に効きます。
【NG4】インターバル走のペースが遅すぎる(or 速すぎる)
部活でインターバル走をやっているのに、なぜかレースで速くならない——その原因は「ペース設定のミス」にある場合がほとんどです。
インターバル走は「レースペース以上のスピードで、レース距離より短い距離を分割して走る」練習です。例えば3000mを速くしたいなら、1000m×3本をレースペース以上で走ることが必要です。
- ペースが遅すぎる場合:心肺への刺激が不足し、練習の意味がない
- ペースが速すぎる場合:後半バテて「形になっていない練習」になる。回復時間が長くなり本数がこなせない
✅ 改善策:目標レースペース〜それより少し速いペースで、最後まで「形になる」本数に調整する。本数を減らしてでもペースを保つことが重要です。
【NG5】練習後にクールダウンをしない
「練習終わった!帰ろう!」——この習慣、長期的には怪我への近道です。
激しい練習の後、体内には乳酸などの疲労物質が蓄積され、筋肉は緊張した状態のままです。この状態を放置すると、疲労が次の日に持ち越され、積み重なると怪我につながります。
「ダウンジョグで心肺機能を落とし(体のスイッチをオフにして)、その後に静的ストレッチをかける。これをルーティンにするだけで、怪我のリスクが大きく下がります。」
— 吉澤和宏トレーナー(五輪担当フィジカルコーチ / Sterling Squad)
✅ 改善策:練習後は必ず①ダウンジョグ5〜10分 → ②静的ストレッチ10分のセットを習慣化する。帰宅後に湯船に浸かるとさらに回復が早まります。
明日の部活から使える即効ドリル5種【手順・本数つき】
NG練習をやめるだけでも効果はありますが、ここからはさらに前に進むための「速さを引き出すドリル」を紹介します。ウォームアップ後、本練習前の5〜10分で完了します。
ドリル1:もも上げドリル(腸腰筋・ピッチアップ)
効果:腸腰筋(股関節屈筋)の強化・ピッチ(歩数)アップ・接地時間の短縮
- 背筋を伸ばして直立。軽く前傾姿勢をとる
- 片足のひざを腰の高さまで引き上げる
- 腕はリズムよく振り、テンポよく左右交互に繰り返す
- 足は「つま先から素早く地面を離す」イメージで行う
目安:20m × 2〜3本 / テンポをゆっくり→素早くと変えると効果倍増
ドリル2:A-skip(股関節の引き付け・接地技術)
効果:股関節の引き付け動作の習得・体の真下での接地・ランニングフォーム改善
- 進行方向にゆっくりスキップしながら前進する
- 毎回のスキップで、前脚のひざを腰の高さまで引き上げる
- 地面に足をつく際は体の真下に足を落とす(前に出さない)
- 上半身はリラックスし、腕は自然に振る
目安:20m × 3本 / スピードより「正確さ」を重視
ドリル3:アンクルジョイントドリル(足首の弾性・接地技術)
効果:足首の弾性力の習得・接地の硬さ改善・地面反力の活用
- 両足を揃えて立つ
- 足首をバネのように使い、かかとをほとんど地面につけずにその場で小刻みにジャンプを繰り返す
- ひざは軽く曲げ、地面との接地時間をできるだけ短くする
- 慣れたら前進しながら行う(上半身はリラックス)
目安:30秒 × 2〜3セット
ドリル4:動的ウォームアップ3点セット(怪我予防・パフォーマンスUP)
効果:走る前に必須の3部位(肩甲骨・股関節・胸椎)をアクティブ化し、怪我予防とパフォーマンスを同時に高める
吉澤トレーナーが五輪選手にも実施する、ウォームアップの核心ドリルです。
- 肩甲骨まわし:両腕を大きく前後に10回ずつ回す
- 股関節回旋:立ったまま片脚のひざを持ち上げ、外側に大きく開いて降ろす(各脚10回)
- 胸椎回旋(ワールドグレーテストストレッチ):ランジ姿勢で前脚側の肘を地面につき、反対の腕を天井に向けて大きく回す(各脚5回)
目安:各種目1セット / 毎練習前に必ず実施
ドリル5:片足スクワット(臀部・ハムストリングス強化)
効果:大臀筋・ハムストリングス強化・着地安定性アップ・推進力向上
「走るだけでは鍛えられない部位がある」というのが吉澤トレーナーの指摘です。特に臀部(お尻)とハムストリングス(もも裏)は走るだけでは不十分なことが多く、専用の補強が必要です。
- 片足で立ち、5〜10秒間バランスを保つ
- バランスが安定したら、ゆっくり片脚スクワット(片脚でしゃがむ)を5回行う
- お尻を後ろに引くイメージで、ひざが内側に入らないよう注意
- 反対脚も同様に
目安:各脚5〜8回 × 2セット / 週3回
ドリルを効果的にこなす3つのコツ
- ドリルは本練習前のウォームアップとして実施する(疲れた後ではNG)
- スピードより「正確さ」を重視する(最初はゆっくりで構わない)
- 毎日ではなく週3〜4回。継続で2〜4週間後に変化を実感できます
保護者・顧問の先生が知っておくべき「成長期の走り込みリスク」
子どもの頑張りを応援したい気持ちはとても大切です。しかし、成長期に走り込ませすぎることには確かなリスクがあります。
走り込みすぎが招く3つのリスク
- 高校・大学での伸び悩み:中学で走り込みを積みすぎると、体が「持久系の動き」に最適化され、速さの伸びが鈍くなる
- 成長期の怪我(シンスプリント・疲労骨折):骨が伸びている時期の過剰な負荷は、大人より怪我リスクが高い
- 陸上離れ:きつすぎる練習で競技が嫌いになり、高校卒業とともに走るのをやめてしまうケースは非常に多い
「子どもが楽しくやることが最も大切。親のエゴで強制させると、高校生になって伸び悩み・陸上嫌いになって辞めるケースが非常に多い。一番の目標は、20代・30代になっても走り続けられる選手を育てること。中高生のうちは『楽しく、正しく』が最優先です」
— 森田歩希コーチ
まとめ:速くなる練習の本質は「量より質」
| NG練習 | やめる理由 | 代わりにやること |
|---|---|---|
| フォームが崩れるまで走り込む | 悪いフォームが刷り込まれる | フォームが崩れたら練習を終える |
| 毎日全力練習 | 回復できずに疲労蓄積・怪我 | 強弱をつけたメニュー設計 |
| 走る前に静的ストレッチ | 筋力低下・怪我リスクUP | 走る前は動的ストレッチ |
| ペースが間違ったインターバル | 練習効果がゼロまたは逆効果 | レースペース以上・形になる本数 |
| クールダウンなし | 怪我・疲労蓄積のリスク | ダウンジョグ+静的ストレッチ |
毎日の練習で「なんとなく走る」から「目的を持って動く」に変えるだけで、1〜2ヶ月後の結果は大きく変わります。今日紹介したドリルを明日の部活からさっそく試してみてください。
「正しい練習の方向性を、プロコーチと一緒に確認しませんか?」
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森田 歩希(もりた ほまれ)
箱根駅伝2区区間賞・3区当時区間新記録・総合優勝2回・青山学院大学4年時主将。現在は Sterling Squad 代表コーチとして、ジュニアから市民ランナーまで幅広く指導。「正しい努力の方向を知ること」をコーチングの核心に置く。

