成長期の走り込みは逆効果|中学生を潰さず速くする「練習量・フォーム・楽しさ」の3原則【箱根駅伝2区区間賞コーチ解説】
「うちの子、もっと速くなってほしい。でも練習させすぎて体を壊さないか心配」——ジュニアランナーを持つ保護者の多くが抱える悩みです。結論から言うと、その心配は正しい。中学時代に走り込ませすぎた子ほど、高校・大学で伸び悩み、陸上そのものを嫌いになって辞めていく——これは私が青山学院大学や実業団で数多く見てきた、最ももったいないパターンです。
この記事を読むと、成長期の子を「ケガと陸上嫌い」から守りながら、将来しっかり伸びる土台をつくるために保護者・指導者が押さえるべき3原則と、今日から家庭でできる週間メニューの組み立てまでがわかります。量をむやみに増やすことより“正しい方向”へ導くことが、子どもを伸ばす一番の近道です。青学OB・箱根駅伝2区区間賞ランナーの森田歩希が、五輪帯同トレーナー・吉澤和宏の監修のもと、長野・東京・埼玉で活動するランニングクラブ Sterling Squad の指導経験からお伝えします。
結論(40秒でわかる要点)
成長期の子には「①練習量を増やしすぎない ②スピードが出るフォームを先に作る ③楽しさを最優先にする」の3原則が有効です。中学生のレースは最長3000m、高校生でも10kmまで。この距離に大量の走り込みは要りません。走り込みの“量”より、正しい体の使い方と続けたくなる意欲こそが、将来伸びる土台になります。
こんな状態は黄信号|まず30秒セルフチェック
本題に入る前に、今のわが子・教え子が当てはまっていないか確認してください。1つでも当てはまれば、この先を読む価値があります。
- 毎日走っているのに、記録が伸びない・むしろ落ちてきた
- 「膝下」「すね」「かかと」など、同じ場所を繰り返し痛がる
- 練習を「楽しい」ではなく「つらい・行きたくない」と言い始めた
- 走る前に、ほとんど準備運動をせずスタートしている
これらは「量の出しすぎ」か「体の使い方が未完成」のサインです。次の3原則で一つずつ解決していきましょう。
原則①|練習量は「増やす」より「見極める」
まず押さえてほしいのは、成長期に必要な走行距離は、大人が思うよりずっと短いという事実です。中学生のレースは最長でも3000m。この距離を速く走るために、大量の走り込みは必要ありません。高校生も種目は10kmまでで、日常的に20〜30kmを踏む必要は基本的にないのです。
それでも「量を積めば強くなる」という思い込みで距離を増やすと、骨がまだ伸びている成長期の関節に負担が集中し、シンスプリントや膝下の故障を繰り返します。監修の吉澤トレーナーいわく、成長期は骨が伸びている状態のため、関節に過剰なストレスがかかる負荷そのものがリスク。だからこそ、量を積むより「正しく動ける体」を先に作ることが最優先になります。
私が青学で原監督のもとで体得したのも、まさに「練習は組み立て(強弱)がすべて」という考え方でした。毎日同じようにダラダラ距離を踏むのではなく、「速く動く日」と「ゆっくり整える日」をはっきり分ける。この“メリハリ”こそが、少ない量で子どもを伸ばすカギです。目安として、成長期の走行距離の考え方を整理しておきます。
| 区分 | 主なレース距離 | 走り込みの考え方 |
|---|---|---|
| 中学生 | 〜3000m | 距離より「速く動く感覚」を優先。長い走り込みはほぼ不要 |
| 高校生 | 〜10km | ベースは必要だが、日常的な20〜30km走は基本的に不要 |
原則②|スピードが出る「フォーム」を先に作る
量を減らして何をするのか。答えは「スピードが出るフォームを、走り込みより先に身につける」ことです。中高生年代は、距離を踏むよりスピードの出る走りを覚える時期。ここでフォームの基礎を正しく入れておくと、少ない練習量でも自然とタイムが伸びていきます。逆に、フォームが未完成のまま距離だけ踏むと、悪い動きが固まってケガを繰り返す“伸び悩みループ”に入ります。
具体的には、走る前後の準備と補強を「走る量」より優先してください。
- 走る前は動的ストレッチ:吉澤トレーナーが重視するのは「肩甲骨まわり・股関節・背骨の胸椎」の3か所。ここを動かしてから走り出すだけで、フォームが安定します。
- ドリルでフォームを作る:スキップやもも上げなど、正しい体の使い方を反復するドリルを練習の前半に。「速く走る」前に「速く走れる形」を作るのが順番です。
- 走った後は坂ダッシュやショートダッシュ:疲れる前ではなく練習後に短い加速を数本入れると、自然とスピード練習になります。
ケガ予防の観点でも、これは理にかなっています。吉澤トレーナーによれば、ランナーに多い膝下・ふくらはぎの故障の根本原因は「股関節の可動域不足」。股関節が動かないぶんを膝下で代償して痛めるのです。つまり、股関節を動かすウォームアップとドリルは「速くなる練習」であると同時に「ケガをしない練習」でもあります。
原則③|「楽しさ」を最優先にする
3つ目が、実は最も見落とされがちで、最も大切な原則です。「楽しい」という気持ちが続くかどうかが、将来伸びるかどうかを決めます。
保護者の方に一番お伝えしたいのは、「親のエゴで強制させないこと」です。全国大会を目指させる、記録を毎回問い詰める——親の意向が強すぎると、高校生になったタイミングで一気に伸び悩み、陸上を嫌いになって辞めてしまうケースを何度も見てきました。今の記録より、「陸上が好きだ」という気持ちを守るほうが、5年後の結果につながります。
私自身、走ることが本当に楽しくなったのは「試合で結果が出たとき(自己ベストや目標達成)」でした。練習はきつい。でも、その嬉しさを味わうために練習する。だからこそ、月ごと・大会ごとに小さな目標を立てて逆算する習慣が、子どものやる気を持続させます。「速くなること」を押しつけるのではなく、「達成できた喜び」を一緒に設計してあげてください。
今日からできる|中学生向け週間メニュー例
3原則を「量より強弱」の考え方で1週間に落とし込むと、次のようになります。あくまで一例で、体力・生活リズムに合わせて調整してください。
| 曜日 | 内容 | 狙い |
|---|---|---|
| 月 | ドリル+軽いジョグ | フォーム作り(原則②) |
| 火 | 短い距離のスピード練習(例:1000m×3) | レースペースに慣らす |
| 水 | ジョグ+補強(体幹) | 整える日(原則①の強弱) |
| 木 | ジョグ+練習後に坂ダッシュ数本 | スピードの土台 |
| 金 | 動的ストレッチ+軽めジョグ | 疲労を残さない |
| 土 | 少し長めのジョグ or 記録会 | 目標づくり(原則③) |
| 日 | 完全休養 or 散歩・水泳 | 回復(睡眠・栄養) |
ポイントは「毎日フルで走らない」こと。走らない日にランニング以外の軽い運動や休養を挟むほうが、成長期の体には合っています。
Sterling Squadで専門的に相談する
「うちの子に合う練習量やフォームがわからない」——そんな時こそプロの視点を。青学OB・箱根駅伝2区区間賞ランナーの森田と五輪帯同トレーナー・吉澤が、長野・東京・埼玉でお子さまの成長段階に合わせた土台作りを直接指導します。まずは体験会で、今の走りをチェックしてみませんか。
よくある質問(FAQ)
Q1. 走り込みは一切させないほうがいいの?
いいえ、ゼロではありません。ある程度のベースは必要です。問題なのは「距離を増やすこと自体を目的にする」こと。中学生なら3000mを速く走るための最小限のジョグと、スピード・フォーム練習の組み合わせが基本です。
Q2. 同じ場所を繰り返し痛がります。休ませるべき?
歩いて痛みがある、片足でジャンプして痛む場合は確実に休ませてください。膝下・すねの痛みは股関節の可動域不足が根本原因のことが多いので、痛みが引いたら股関節を動かすストレッチから再開すると再発しにくくなります。
Q3. 親はどこまで関わるべき?
記録を管理・監視するより、「今日は楽しかった?」と気持ちに寄り添う関わりを。目標は本人と一緒に立て、達成を一緒に喜ぶ——これが最も伸びる関わり方です。
まとめ|量ではなく“方向”が子どもを伸ばす
成長期は、頑張らせすぎるほど逆効果になりやすい難しい時期です。だからこそ「①量を見極める ②フォームを先に作る ③楽しさを守る」の3原則を思い出してください。速くなるために練習量はある程度必要ですが、その努力が報われるかは“方向が正しいか”で決まります。正しい方向へ導いてあげれば、子どもは驚くほどの勢いで伸びていきます。
この記事の執筆・監修
執筆:森田歩希(もりた ほまれ)/青山学院大学出身(青学OB)。箱根駅伝2区区間賞・総合優勝2回・4年時主将。現在はランニングクラブ Sterling Squad(長野・東京・埼玉)でジュニア〜市民ランナーを直接指導。
監修:吉澤和宏/五輪帯同トレーナー。フィジカル・怪我予防・栄養を担当。

