陸上部の基礎ドリル5種で中高生が速くなる|青学元主将コーチ監修

「毎日たくさん走っているのに、記録が伸びない」。陸上部で頑張る中高生や、顧問の先生、保護者の方からよく聞く悩みです。

先に答えを言うと、中高生が速くなる近道は、走る量を増やすことではありません。スピードの出るフォームを身につけることです。そのために必要なのは、毎回の練習前の約10分だけです。

この記事では、青学OB(青山学院大学出身)で箱根駅伝2区区間賞・4年時主将の森田歩希コーチの指導の考え方をもとに、基礎ドリル5種を紹介します。ドリルの動きを支える補強3種は、五輪帯同トレーナー・吉澤和宏の考え方に沿って選びました。

読み終えると、次の3つがわかります

  • 自分の走りのクセと、最初に取り組むメニュー(30秒)
  • 明日の練習前から使える、ドリルの順番と回数
  • いつもの部活の1週間への組み込み方

あなたの走りはどれ?30秒でわかるセルフチェック

走っている姿を仲間にスマホで撮ってもらうと、より正確にわかります。当てはまったものが、あなたが最初に取り組むメニューです。

当てはまる走り 最初に取り組むメニュー
肩がすくむ、腕が体の前で左右に振れる ① 腕振りドリル
腰が落ちて、上体が後ろに傾く ② もも上げ+補強② ヒップリフト
かかとからドスンと着地する ③ Aスキップ
脚を前に投げ出し、体の前で着地する ④ Bスキップ
走っていると軸が左右にブレる 補強① フロントプランク+補強③ サイドプランク

メニューが決まったら、すぐにドリルへ進みたいところです。ただ、その前に「なぜ走り込みではないのか」を知っておくと、毎日の10分に迷いがなくなります。

なぜ中高生は「走り込み」より「ドリル」で速くなるのか?3つの理由

  1. 種目の距離に、大量の走り込みは必要ないから:中学生の最長種目は3000mです。高校生には10kmの種目もありますが、20〜30kmを走り込む必要は基本的にありません。
  2. 新しい動きの飲み込みが早い時期だから:中高生は、良いサイクルに入るとすごい勢いで伸びます。
  3. 走り込みすぎると、後で伸び悩みやすいから:中学時代に走り込ませすぎると、高校・大学で記録が伸びにくくなります。陸上そのものが嫌いになって辞めてしまう選手も少なくありません。

中高生は距離を踏むより、スピードの出る走りを身につけることが大事です。動的ストレッチやドリルといった基礎を正しく身につけると、少ない練習量でもスピードが出るようになります。

森田歩希コーチ(青学OB・箱根駅伝2区区間賞/Sterling Squad)

練習前10分でできる基礎ドリル5種と、よくあるNG

ドリルの前に、動的ストレッチで肩甲骨・股関節・胸椎(背骨の胸のあたり)をほぐしておきましょう。①〜④は毎回の練習前に、20〜30mを各2本。⑤の流しは、ポイント練習の日に足します。

① 腕振りドリル:上半身の力みを取る

その場で、肘を後ろに引く意識で振ります。
NG:肩がすくむ、腕が体の前で左右に振れる。

② もも上げ:腰の高さを保つ

腰の位置を高く保ったまま、足を体の真下に下ろします。
NG:腰が落ちて、上体が後ろに傾く(脚が前に流れる原因になります)。

③ Aスキップ:弾む感覚をつかむ

もも上げにリズムを加えます。地面を「押す」のではなく、「弾む」感覚をつかみましょう。
NG:かかとからドスンと着地する。

④ Bスキップ:ブレーキの少ない接地を覚える

膝から下を前に出したあと、体の真下へ引き戻します。
NG:脚を前に投げ出したまま、体の前で着地する。

⑤ 流し(80〜100m):動きをスピードにつなげる

ドリルで作った動きを、実際のスピードの中で再現します。力まず7〜8割の力で2〜3本走りましょう。

森田コーチがフォームで重点的に見るのは、「腰の高さ」「軸が前傾か後傾か」「軸がブレていないか」の3点です。動画を撮ったら、この3点を仲間同士で確かめましょう。

スピード練習が苦手な人は、ドリルで動きを作ってから、練習の最後に坂ダッシュやショートダッシュを入れてみてください。この記事のドリルは日々の基礎づくり用です。レース終盤の課題には、部活の3000mでラストに離されないためのドリルも参考になります。

ドリルの動きを支える補強3種(器具なし・約10分)

森田コーチ自身、高校時代は故障に苦しみました。転機は、大学で取り組んだ体幹・インナーマッスル中心の「青トレ」です。故障が大幅に減り、力感なく走れるようになりました。フォームは、それを支える体があってこそ安定します。

ただし、成長期は骨が伸びている途中です。関節に大きなストレスがかかる種目はリスクが高いため、吉澤トレーナーは正しいフォームと正しい負荷で行える種目に絞ることを重視しています。この考え方に沿って選んだのが、次の3種です。

  • ① フロントプランク(30秒×2セット):肘とつま先で体を一直線に支え、走っているときの軸のブレを抑えます。
    NG:腰が反る、お尻が上がる。
  • ② ヒップリフト(15回×2セット、慣れたら片脚10回):仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げます。「腰の高さ」を保つためのお尻の筋肉を鍛えます。
    NG:腰を反らせて持ち上げる。
  • ③ サイドプランク(20〜30秒×左右2セット):横向きで肘をつき、体を一直線に保ちます。着地のときに骨盤が左右に落ちるのを防ぎます。
    NG:お尻が下がって、体が「くの字」になる。

避けたいのは、重い重量を使った筋トレや、フォームが崩れたまま回数を競う補強です。回数より、正しい姿勢で最後までやり切ることを優先しましょう。

部活の1週間にどう組み込む?ひと目でわかる早見表

タイミング 内容 時間
毎回の練習前 動的ストレッチ+ドリル①〜④ 約10分
ポイント練習の日 上記に加えて流し2〜3本 +5分
週2〜3回の練習後 補強3種 約10分
毎回の練習後 クールダウンジョグ+静的ストレッチ 約10分
毎食 タンパク質を2品以上 —

中高生はご飯で糖質をしっかりとれている一方、タンパク質は意識しないと不足しがちです。食事も練習の一部と考えましょう。

よくある質問3つ(本人・顧問・保護者)

Q. ドリルはどのくらい続ければ効果が出ますか?

個人差はありますが、まずは毎回の練習前に1か月続けてみてください。そのうえで、最初に撮った動画と見比べてみましょう。「腰の高さ」や「軸」の変化は、動画で見ると気づきやすくなります。

Q. 部活の練習時間が短く、ドリルの時間が取れません。

新しく時間を作る必要はありません。いつものウォーミングアップの一部を、ドリル①〜④に置き換えるところから始めましょう。

Q. 保護者としてできることはありますか?

いちばん大切なのは、結果を強制せず、子どもが楽しく続けられる環境をつくることです。親の意向が強すぎると、高校生になって伸び悩んだり、陸上を辞めてしまったりするケースが少なくありません。食事でタンパク質を意識するなど、そっと支えるサポートがおすすめです。

まとめ:明日の10分から、量より質の練習を始めよう

練習量はある程度必要です。ただ、努力が報われるかどうかを決めるのは、その方向性です。頑張る方向を「量」だけから「質」へ広げると、高校・大学でも伸び続ける土台ができます。明日の練習では、次の3つから始めてみてください。

  1. 今の走りをスマホで撮り、セルフチェックで最初のメニューを決める
  2. 練習前の10分で、ドリル①〜④を各2本行う
  3. 1か月後に同じ角度で撮り、腰の高さと軸を見比べる

一方で、SNSで見たドリルをそのまま真似するだけでは、効果は半減してしまいます。体の特徴やクセは一人ひとり違い、必要なメソッドも変わるからです。「このやり方で合っているのかな」と迷ったら、一度プロにフォームを見てもらってください。

Sterling Squadで専門的に相談する

「自分のドリル、本当に合っている?」と思ったら、体験会へお越しください。青学OB・箱根駅伝2区区間賞の森田コーチが、腰の高さ・軸・接地を直接チェックします。長野・東京・埼玉で体験会を開催しています。